化学平衡論的な変成岩の研究で知られるゴールドシュミット(1888-1947)は地殻を含む岩石圏を「酸素圏」と呼んだ。なぜなら、地殻の構成物質のなかで最も多いのが酸素にほかならないからである。その構成元素を多い順に並べると、O,Si,Al,Fe,Ca,Na,K,Mgとなる。これらの元素は地殻の99%を占めており、中でも酸素はイオン体積比で90%を超えるといわれている。まさに我々は酸素の中で暮らしているといえよう。
地殻の岩石を構成する鉱物は主に珪酸塩鉱物であるが、この珪酸塩鉱物の骨格はSiO4正四面体であることはよく知られている。
LONGMANより発行されている同名の書籍では造岩鉱物(The Rock Forming Minerals)をORTHO- AND RING SILICATES,CHAIN SILICATE,SHEET SILICATE,FRAMEWORK SILICATE,NON-SILICATESの5つに大別して解説している。 ここにもみられるようにSILICATES(珪酸塩鉱物)が大半を占めている。一般に珪酸塩鉱物はSiO4正四面体(次図(a))を基本形にしているが、これは小さなSiイオンが4つの大きな酸素イオンに取り囲まれて(SiO4)4-四面体を形成している。
この基本形が頂点の酸素を共有することで結合し様々な珪酸塩を形成する。 その主なものは次のように呼ばれている。
表1.1 珪酸塩鉱物の分類
分類 | Si:O比 | 図中記号 | 代表的鉱物 | 説明 |
ネソ珪酸塩 | Si4O16 | (b) | カンラン石、ザクロ石など | 独立したSiO4四面体が珪酸イオンをつくる |
ソロ珪酸塩 | Si4O14 | (c) | メリライト | 2個のSiO4四面体が1個のOを共有 |
サイクロ珪酸塩 | Si4O12 | (f) | 緑柱石、電気石 | 3個・6個のSiO4四面体がそれぞれ2個のOを共有 |
イノ珪酸塩(単鎖) | Si4O12 | (d) | 輝石 | SiO4四面体が2個のOを共有し、鎖状になっている |
イノ珪酸塩(複鎖) | Si4O11 | (e) | 角閃石 | SiO4四面体が2個のOを共有し、鎖状になっている |
フィロ珪酸塩 | Si4O10 | (g) | 滑石、蛇紋岩、雲母、粘土鉱物など | SiO4四面体が3個のOを共有し平面的に広がっている |
テクト珪酸塩 | Si4O8 | - | 石英、長石、準長石 | SiO4四面体の4個のOを全て共有し立体網状の構造をもつ |