小さな結晶でも、原子や分子の大きさでみると原子や分子は無限に規則正しく配列しているように見える。この原子・分子の配列をその最小単位にまで細かくしたものを単位格子と呼ぶ。(厳密には格子のとり方に注意が必要であろう。)
この単位格子の形は原子・分子の配列の仕方によりいくつかの種類に分類される。それは、図に示すように単位包の中の軸(a,b,c)と各軸間の角度(α、β、γ)により分類区分されることを意味する。
自由に成長できる条件でできた結晶は鉱物に特有の結晶形をもっている。 この形は先に述べた原子・分子の配列の様子を表していることが多い。 一般に等軸晶系の場合はサイコロのような形を示すことが多い。 一方向からみて正方形に見えるものは正方晶系に属し、菱形ならば斜方晶系であることが多い。 すなわち鉱物の外観は内部の構造を反映したものであるから、逆に鉱物の外形からその鉱物がどういう晶系に属するものか推定できる。
同一種の鉱物であっても、面の発達のしかたの違いから外見上全く異なって見えることがしばしばある。 ある個体1では面Aが発達し、面Bは発達が悪かったとする。 それはかなりいびつな形状となっている。別の個体2では面A'と面B'がほぼ同じように発達し均整のとれた形状をしている。 個体1の面Aと個体2の面A'、個体1の面Bと個体2の面B'がそれぞれ対応しているとすると、AB間の角度と、A'B'間の角度は一定である。 これを「面角安定の定律」という。 大きな結晶であれば、直接「測角器」(分度器のようなもの)で角度を測定できるが、小さなものは難しい。 研究室では光の反射を利用して角度を読みとる反射測角器を使う。
光の反射を利用すれば鉱物を回転させ、光の反射を観測することで面角を測定できる。
多くの結晶は叩くと平らに割れる性質をもっている。これを「へき開」という。 これは原子が規則正しくならんでいることを示すものである。
石英や黄鉄鉱などにはへき開は見られない。 石英の結晶「水晶」は平らな結晶面が見られるにもかかわらず割れ口は「貝殻状断口」を示す。 原子が螺旋状に配列しているためとくに割れやすい方向がないという。 この「へき開(cleavage)」もそれぞれの鉱物に特有の性質であるのでよく観察する必要がある。
「へき開」でまず思いつくのが方解石である。 非常に割れやすいので試しにかけらを砕いてルーペで観察するとよい。 どんなに小さなかけらでも同じ形に割れていることがわかるはずである。 方解石は三方晶系に属する。
ある鉱物が「現れる結晶面が同じであっても同一の形状を示さない」言いかえると、結晶面の発達の程度の違いで、外見の異なった結晶になる。 これを晶癖という。これが生じる原因はよくわかっていない。
また、同じ鉱物でも、面の現れ方やその組み合わせで外観の全く異なる鉱物になる場合がある。 これを晶相という。 これが生じる原因は不純物の付着や温度、圧力条件の変化によるともいわれている。
鉱物の硬さは二つの鉱物を交互に傷つけあうことで調べる。 その際の指標としてモースの硬度計があげられる。 これは、真の硬さのグレードを表すものではないが、比較的入手のしやすい鉱物で作られた標準である。
表の上側の鉱物が軟らかく、下側ほど硬い。
表1.3 モースの硬度計
鉱物 | モース硬度 | 備考 |
---|---|---|
滑石(Talc) | 1 | |
石膏(Gypsum) | 2 | 爪:2.5 |
方解石(Calcite) | 3 | 銅貨:3 |
ほたる石(Fluorite) | 4 | |
リン灰石(Apatite) | 5 | 窓ガラス:5.5 |
正長石(Orthoclase) | 6 | ナイフ:6 |
石英(Quartz) | 7 | |
黄玉(Topaz) | 8 | |
コランダム(Corundum) | 9 | |
ダイヤモンド | 10 |
密度は鉱物を決定する上で重要な物理的性質である。 しかし、実際には鉱物が小さかったり、純粋でなかったりなどいろいろな理由から測定が難しく、正確を期するには実験室で重液などを用いて測定する必要もあろう。
しかし、ある程度の大きさの鉱物であれば、バネ秤で重さを計り、そのままそれを水中に下ろして、重さの変化から体積を求め、最初の重さを体積で除しておおまかな値を求めることができる。