数千メートルにも及ぶ地層の堆積が起こるためにはそれに相当するだけの地盤の沈降が起こらねばならない。 こういう地域は従来から地向斜・造山帯とよばれているが、堆積の場には火山の活動による陥没帯などもある。
この厚い地層の堆積の場として1940〜1950年代には「地殻の鉛直運動がそれをもたらし、水平的運動(褶曲や衝上断層)は従属的である」と考えられていた。 褶曲運動のもっとも激しい地域はすなわち昇降運動の最も激しい場所と考えられた。 その後1950年代の終りから1960年代のはじめにかけて水平運動優位のプレートテクトニクスが台頭しそれが発展し、現在に至っている。 大陸沿岸部に発達する大規模な堆積の場にくらべて、火山活動による陥没帯などはもう少し小規模であり、陥没という地盤の昇降運動によるものである。 しかしこれも結果的にはプレートの運動に従属して起こるものと考えられる。
地層の時間的性質である「地層累重の法則」(ステノ,1669)や地層の空間的広がりを示す「地層同定の法則」(William Smith)があるが、前者は上下に重なる地層は本来下にあるものの方が上にあるものより古いという考え、後者は岩相の違いはあっても同時期に堆積した地層には同様な化石群集が含まれるなど同時性を有しているという考えである。 これらの考えは大半の地層についてよく当てはまり、この考えに基づいていろいろな地層の調査と区分が行なわれた。
しかし、後述するラミナなどは「地層累重の法則」があてはまらないものといわれている。 また、見かけ上の上下だけでは地層の上下が判断できない場合もある。 例えばそれは大規模な海底地すべり堆積物であるオリストストロームであり、それに含まれる岩塊オリストリスはもともとの堆積の場とは全く異質な場所と構造のなかに移動してしまったものである。 これらは比較的規模が大きいために、ある地域の地層の上下関係を論じるときには必ずしも「地層累重の法則」があてはまらないことになってしまう。
地層のを構成する粒度や粒子、内部構造の違いなどから地層と地層の間に明瞭な境界ができるがこれを層理面という。 崖など地層の断面がみられるところでは、境界線として現れており、これを層理という。 そして二枚の層理面によってはさまれた地層を単層という。 単層は上下を面ではさまれた形態、すなわち板状であるが、この板はある程度の広がりをもっているとしても無限に広がるわけではない。 また、単層は厚い地層を区分する上での最小の単位であり、地質学的な「境界」のひとつである。
もはや古典といわれるかもしれないが湊正雄氏の「地層学」(1953)には次のように単層の特徴が書かれている。
すべての単層は有限の拡りを有すること
すべての単層は一定の形を有していなく不定形であること
すべての単層がある方向性を有すること
すべての単層は何らかの点において、場所ごとに異質性を示すこと
整合している単層と単層との間にも欠層をみること
鍵層の存在すること
単層は新旧の順序に応じ単に上下的に累重するのみならず、水平的に並立して存在する
複数の単層が集まったものを部層、部層の集まりを累層という。 さらに累層の集まったものを層群といい、層群の集まりを累層群という。
地層には後に述べるような内部構造、堆積時の痕跡、堆積した後の造構的な構造(地殻変動などにより岩石や岩体の変形や変位)が残されている。 また、地層の堆積はその構成物質の供給と堆積ということから、地上の侵食とその結果生じた土石の運搬と移動、堆積の過程を考える必要がある。 これには、その地層の堆積の時代の侵食域の存在(通常は陸域である程度の高低差や流域をもつ)と連続して地層が堆積できる場が必要である。
大雨の時期になると、日本のような急峻な地形のところでは山崩れが発生することがある。 この山崩れは地表の侵食のひとつであり、これにより大量の土砂が流出する。 崩れた土砂は川に流れ込み水とともに運搬され、やがて河口などの急に開けたところでは流速の減少とともに沈降し堆積する。 一般にはこの運搬と堆積の関係には運ばれるものの大きさと流れの速さが大きく関わっている。
この図にみられるようにある程度流速が速くなると運搬がはじまり、侵食がはじまる。 運搬の過程では粒子同士がぶつかり合い砕けたり、削られたりして最初は角張っていたものが段々円磨されていく。 こうした運搬と堆積の作用は別に大雨のときに限らず常に起こっていることである。
地層(単層)の中をよく観察すると粒子の異なる薄い層を見出すことができる。 これはラミナ(葉層)とよばれるもので、その地層の堆積時の波の影響などが残ったものである。 このラミナにはその形態から平行ラミナ、斜交ラミナに大別される。
この斜交ラミナはでき方や形態によりいくつかに分類できる。 一度堆積した地層が波でえぐられてできるもの、波の影響で海底にできるリップルマーク(漣痕)などの起伏など断面が曲面を示しレンズ状に見えるもの、板状、クサビ状のラミナの重なりなどである。
ラミナは単層の構成粒子が凝固するまでの最終移動を表すものである。